楽天をデュポン分析してみた。
楽天株式会社
代表取締役会長兼社長
三木谷 浩史
(楽天株式会社公式ホームページより引用)
楽天は会員数1億人を超える巨大IT企業。
積極的なM&Aにより多種多様なサービスを展開。楽天スーパーポイントを共通通貨とした楽天経済圏を拡充して、数多くのアクティブユーザーを自社サービス多数に抱える。
メガベンチャーと自負する程の大企業らしからぬ成長性と、グローバル化に伴う英語公用語化等の革新的な経営方針に私も大変魅力を感じていた。今働いている銀行に入っていなければ、間違いなく自分は楽天に入社していた。実際に内々定も貰っていたし、今頃楽天に入っていればどうなっていたのかと思い返すことも稀にある。
そこで、今回は楽天をデュポンシステムと呼ばれる手法を用いて財務分析してみたいと思う。
デュポンシステムは米国の化学会社E.I.デュポン社によって考案された財務管理システムで、前提として経営改善の目標を自己資本純利益率(ROE)の上昇にあると定義している。
ROEはReturn On Equityの略であり、文字通りReturn(当期純利益)をEquity(自己資本)で割ることで求められる。
なぜROEが重要かというと、純資産(つまり株主の払込資本と内部留保)に対してどれだけの純利益が生み出されているかを表しているため、ROEが高いほど投資に対してリターンが大きい=投資する価値が高いと考えられるからである。
デュポンシステムではこのROEを以下のように分解する。
各項は以下の式で求められており、それらを掛け合わせるとROEとなることが分かる。
デュポンシステムでは、ROEを向上させるには分解されたどの項を改善すべきかを考え経営戦略に繋げる。
では、これから具体的に楽天株式会社の決算情報を元に数値を算出する。
楽天のROEは直近3期で8.0%→15.5%→19.6%と大きく上昇している。
昨年度2014年度の有価証券報告書によれば
楽天株式会社の総資産は3,680,695百万円、株主資本が331,198百万円、売上高が598,565百万円、当期純利益が65,173百万円であった。これらの数値を元に各項を算出した。
また、比較企業として同業種のヤフーを挙げた。
楽天、ヤフーとROE自体には大差は無いにも関わらず構成要素が極端に異なっており興味深い。特に楽天の財務レバレッジの高さが際立つ。財務レバレッジは自己資本比率の逆数となっている。事実、楽天の自己資本比率はわずか9%となっており、ヤフーの73%と大きく乖離している。自己資本比率は企業の安全性を示しており、40%以上なら倒産しにくいと言われるので、楽天の9%は非常に低い。
金融業界は自己資本比率が低いため、楽天が楽天銀行や楽天証券などインターネット金融サービスを手掛けているという点は考慮すべきだが、健全性の面で不安が残る。一方、ヤフーは総資産のほとんどを自己資本で補っており倒産リスクが低いことが考えられる。
楽天は確かに高いROEを計上している。しかし、これは単に株主資本比率が低く負債に依存していることに起因している。ROEは分母となる自己資本を削るほど高くなるという問題点があり、それを顕著に表している。
楽天、ROEの高さの実態は安全性の低さ。数字上では決して良い企業とは言えない。
でも、 自分自信も楽天のヘヴィユーザーであるし、消費者が様々なインターネットサービスをクロスユースする楽天経済圏のビジネスモデルは素晴らしいと思う。そして、楽天は負債を有効活用して事業規模拡大を続けてる事実。
一見、財務面は良くないかもしれない。しかし、激しい経営方針で常に高成長を求め続ける、まさに楽天らしいなあって思う。